宝塚月組『今夜、ロマンス劇場で』感想|原作超えの面白さ。俺たちが見たかった宝塚が今ここに!
年始の月組公演、行ってきました。結論「ロマンス劇場で」は原作映画の100000倍面白かったです。トップ二人の華やかさ、かつ芝居が上手な月組だからこそ輝いた作品だと思います。
原作の映画版「今夜、ロマンス劇場で」(ネタバレ)
映画「今夜、ロマンス劇場で」は2018年の日本映画ですが、登場人物が少なすぎ、ストーリーも演出もシンプルかつベタすぎて、いまいち見ごたえがなかった。ですが、このシンプルすぎるストーリーの着地点がものすごく新しいのです。
この作品のように「映画から憧れのキャラが出てくる」設定の映画はいくつかあって、映画ファンとしてはウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」を思い出します。この作品でもそうなのですが「現実と妄想がごっちゃになる」という設定に対しては「現実は甘くない」っていう着地になりがち。その点、映画「今夜、ロマンス劇場で」では「夢を見て何が悪いの?」というカラッとした開き直りが貫かれていて、それがうまくメロドラマの枠組みにハマっている。ここがユニークで、面白いところです。
主人公は映画の中のお姫様と恋することににちょっとは悩むんですけど、最終的にお姫様との美しき日々のほうを意外なほどあっさり選ぶんですよね。現実の好意を寄せてくれている子には目もくれない。オタクとして推しと共に人生をサバイブし、オタクにとってのエルドラドに到着した男の物語。この着地、実はヤバい。でもわかりみ深い。これってつまり、「宝塚オタクとして日々楽しく生きるって最高!」ってことですよ。これを宝塚で舞台化しようと思った小柳先生、天才だと思います。
月組の「今夜、ロマンス劇場で」
主人公は夢見がちな映画監督志望、いまいちパッとしないけど心底優しい男。この「パッとしないけど優しい」人物を宝塚で演じる、ってものすごく難しいですよね。それを月城かなとさんはとても魅力的に表現されています。仰々しい軍服や、イケイケなスーツを着ているわけではないのに、絶対的主人公。確実な芝居力、内側からにじみ出るスターオーラがないとできない役柄です。そして顔がハンサムすぎて…あんなに色味を抑えた地味めなスーツを着ているのに目が離せません。
「映画の中のお姫様」の海乃美月さんは華やかなドレスが似合う方で、映画の中での舞踏会は「なぜ日本人がお城で舞踏会を…?」というバリバリ違和感のあるシーンでしたが(綾瀬はるかってすごく和顔)、オードリー・ヘップバーンのような、それはもう美しいお姫様としてしっくりとハマっていて、月城かなとさんとのテンポの良いやり取りは見ていて安心感しかありません。さらに昭和の大スター役の鳳月杏さんの自信過剰っぷりもたまらない。器のでっかい大スター、最高のコメディリリーフ。
さらに、舞台版ならではの登場人物が効果的にストーリーを盛り上げています。映画版では「映画からキャラが出てくる」というファンタジー設定があまり活かされてない気がしましたが、舞台版ではファンタジー設定を更に付け足すことで、逆に物語に説得力をもたせることに成功していると思いました。映画版のままだとキャラクターも足りないしね。登場人物は増えていますが、一人ひとりが個性的で存在感があり、舞台上の人々を目で追うだけで楽しいくらい。
特筆すべきは最後のシーンの演出だと思います。宝塚オタクが夢見るような、華やかで美しく幸福で、何一つ欠けるもののない大団円。スクリーンを使った演出で今までで一番感動しました。これだよ、私達が宝塚で見たかったものは・・・!小柳先生が、私達を喜ばせようとしてくれているのをひしひしと感じました。ありがとう・・・
ショーの『FULL SWING!』もまぁ楽しかったのですが、JAZZがテーマのショーはちょっと無理があるかな。宝塚のように様式美を楽しむ世界観と、With FeelingなJAZZって、相性が良くないような気がするんですよね。正直、ショーを見ているときは目が忙しくて頭が空っぽなので、よ~く噛み砕いたメロディしか覚えられないんですわ・・・これでショーも100点で楽しかったらなー!初心者を連れていきたい公演になったのですが。
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