宝塚『眩耀の谷(げんようのたに)~舞い降りた新星~』『Ray -星の光線-』感想|もっと体幹の強さ感じさせてよ
東京宝塚劇場にて、久々の観劇となりました。劇場にいると生きてるってカンジがするぜぇ・・・。で、お芝居「眩耀の谷 (げんようのたに)」の感想は
礼真琴のポテンシャルの高さをもっと見せつけてよ!
という一言に尽きる。
すべてのセリフが結論にたどり着くための伏線でしかなくて、それが物語の叙情性を深めていないのが気になった。 「〇〇は〇〇な性格だからなぁ~!」 とか「言葉に尽くせぬ感情の発露・・・それが舞ッッ!!」とか、大事なことをほぼ言葉で説明しちゃってて残念。印象的なセリフとか、歌、ダンス、身のこなしや表情で役を深く演じさせてあげて欲しい・・・せっかくの礼真琴の抜群に高いポテンシャルが! せっかく愛月ひかるという超絶悪役のうまい人と、瀬央ゆりあという超絶器用な人が両脇固めてるのに! もっと深い人物描写が欲しかったなぁ・・・
例えば身を挺して主人公を守った脇役がいる場合、「主人公のために死んだ」事実ではなく、「彼が命を投げ出すに至った」経緯に心を痛め、「主人公の喪失感の大きさ」に共感するからこそ、観客は涙するのではないか。「友人」らしき会話をしただけの男が死んだからといって涙できるほど、わたしたちは簡単に出来てない! いや、案外チョロい場合もあるけど!
・・・なんか文句ばかりになってしまった。でも十分楽しかった。役者たちは文句なしに素晴らしいんだから。衣装も音楽もオリエンタルで美しいし。文化的に「ムーラン」の時代に近いのかな? 兵隊の衣装とか特徴的でカッコイイ。
しかし、あの礼真琴・ 舞空瞳のなんとも言えない可愛らしさよ。音楽学校の首席コンビで、芝居・ダンス・歌すべて素晴らしく欠点がないのに、ホニャっと可愛い笑顔、おちゃめな性格が相まって、本当に親しみやすく、何度でも繰り返すが可愛らしい。
「ロックオペラモーツァルト」で表現した「陰」の雰囲気も良かっただけに、心情が複雑に絡み合う、芝居が見せ所! みたいな作品も早く見てみたいな。
ショーの『Ray -星の光線-』は素晴らしかった。ダンスも歌も見応えたっぷり。礼真琴の尋常でない身体能力の高さを満喫した。普通に空中で2,3歩あるいてたと思う。一人踊りでじゅうぶん間が持っちゃうってすごいことだ。
宝塚でもプロジェクション・マッピングが自然に使われるようになって、それを生かした冒頭の舞台装置は新鮮。エレクトリカルな装飾も好きだけど、あれはあれで若きスターに似合う演出だなぁと思った。
久々の観劇で、ショーの多幸感溢れる雰囲気に飲み込まれて、胸がいっぱいになった。端から端までみんなニコニコ踊ってて、(スゲー顔が小さくて足が長い)ってお決まりの感想が頭をよぎりつつも、宝塚のショーを見ているんだなぁと、心が癒やされるのをヒシヒシと感じました。感謝、感謝しかないよ・・・ありがとう、またアホほど劇場へ通いますよ。
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