月組「ピガール狂騒曲」感想|脳がしびれるほどの多幸感

ハマって3回見に行った宝塚歌劇月組「ピガール狂騒曲」の感想です。同時上映の日本物レビューについては省略。まだ魅力がつかめない・・・

物語について

シェイクスピアの「十二夜」をベースにしながらも、大胆にアレンジされた明るく楽しいコメディ。1900年のパリ・ピガールのキャバレー、ムーランルージュが舞台だ。

実際にその時代に活躍した文化人、シドニー=ガブリエル・コレットがヒロインで、ムーランルージュには欠かせない画家・ロートレックも登場する。

コレットは冒頭から身勝手な夫に三行半を叩きつけ、自由に明るく生きようとする女性として描かれている。が、実際のコレットの夫は洒落にならんほどのパワハラ野郎だったようだし、当時のフランスはおおっぴらに女性の自立を主張できるような状況じゃなかっただろう。ロートレックは障害を持っていて脚が極端に短く、持病や差別に苦しんでいたらしい(映画「コレット」「赤い風車」参照)。

だけど、そのことはこの完璧な祝祭劇で描出される必要はない。劇中のムーラン・ルージュは私達にとっての宝塚みたいな存在だ。ひとときの現実逃避。きらびやかな夢の世界。夢、夢、夢。そこには優しく純粋な人々しか存在せず、劇場を愛するが故にから回る彼らの物語はおかしく、そしてまばゆい。大団円のエンディングには脳がしびれるほどの多幸感が漲る。辛く苦しい現実って、何だっけ?

劇中で開催されるショーのシーンの背景に鏡が使われていて、観客席の私達が反射して映り込む。これも演出なのだとしたらニクい!
舞台上にも観客席にも、ここには劇場を愛する者たちしか存在しないのだ。なんという幸せな空間だろうか。

ほんと、良い作品でした。何度でも見られちゃう。

やっぱりコメディが似合う月組

芝居の月組、と言われるように芝居が上手な人が多い。コメディは確実な芝居力、そしてセンスがないと成立しないものだと思う。テンポ感を崩さずに絶妙な間を入れたり、アドリブを織りまぜる必要があるから。

珠城&さくらコンビは明るいコメディが一番似合うし、月城かなとはコメディセンス抜群で容姿も歌も良いというスキのない方。組長をはじめ脇を固める鳳月杏、輝月ゆうま、海乃美月、千海華蘭、暁千星、風間柚乃、、、言うまでもなく実力派ぞろい。本当に今の月組すごい。舞台上で全員が細かい芝居をしているせいで何度見ても目が足りない!そして今更だけどみんな異常に脚なげえな!

(個人的に暁千星のイケメンムーブから目が離せなくて、前髪をかきあげるたびに光のプリズムが・・・ありがとうありがとう)

どんな時も夢を与えてくれる存在でありつづけてくれる宝塚に感謝してもしきれないので、いつもどおりタップリ金使って帰りました。