帝劇「ガイズ&ドールズ」感想|やっぱり女たちこそが主人公だ!(ややネタバレ)

恐ろしいチケット難を乗り越え、ついに見てきた「ガイズ&ドールズ」@帝国劇場! 大好きな望海風斗さんがアデレイド!

「ガイズ&ドールズ」はカラッと笑えるラブコメディ。1930年代ニューヨークの空気感や、個性的な登場人物たちの粋で軽妙なやり取りが魅力で、ブロードウェイや宝塚でも何度も上映されている名作だ。この作品で、男たちは困難な現実から逃れるように仲間たちと連れ立ってギャンブルにのめり込んでいる。それに対して女たちは現実に折り合いをつけ、ひたむきに強く生きようとしている。そんな彼らが体現する過剰な「男らしさ」「女らしさ」が見どころの一つ。だから宝塚でも人気のある演目なのだと思う。

救世軍の軍曹である「サラ」(明日海りお)はキリストの教えで人々を救おうと奮闘する。一方、キャバレーで人気の踊り子「アデレイド」(望海風斗)は14年も婚約中の男を追いかけ回し、結婚を迫る毎日。この対照的な女二人を、宝塚の同期である2人が演じるんだから!元トップスターで絶大な人気を誇り、実力は折り紙付き!更に衣装は宝塚で最高のデザイナー有村淳!!間違いなさすぎ!

宝塚版では男たちをフィーチャーしたつくりになっていて気づかなかったが、この作品の実質的な主人公は女たちだ。逃げ回ってばかりの男たちを女たちが愛によって変えてしまう、という物語なんだから。女たちが魅力的であればあるほど、作品が説得力を獲得して面白くなる。明日海&望海コンビはさすがの存在感で、クルクルと表情を変え、思い切り泣いて笑って悩んで、目が離せない。こんな完璧なサラとアデレイドが見られるなんて!

アデレイド&サラ。アクスタ初めて買った

サラの頑なでひたむきな生き方、スカイに出会って自分らしさからはみ出したときの弾けっぷり(かわいい)。アデレイドの天真爛漫だけど一途にネイサンを愛するいじらしさ(かわいい)。正反対に見える二人は一方で似た者同士。純粋で強く、幸福な未来を信じている。恋人との将来について話し始めたら一瞬で意気投合する二人。(ここで宝塚音楽学校で励まし合う彼女たちを投影してしまうファン心理)

物語の終盤、彼女たちは「私と生きてほしい」と強く男たちに迫る。人を変える事が出来るのは愛だけなんだろう。男たちはついに生き方をガラッと変えてしまったよ、という所で唐突に終わってしまうが、昔はこれがかなり新鮮なオチに見えたのだろう。あんなにやさぐれてた男たちが結局女のいいなり(笑)みたいなズッコケは、男性優位の価値観がなければ通用しないユーモアだ。今や物足りないオチでしかないが、補って余りあるほど幸福な大団円だし、可愛げのある作品だと思う。

(劇中の性差別的な発言はかなり修正されているだろうな。今でも不快に思う人もいるだろう。古典作品における「男と女」の価値観は江戸っ子のちょんまげと同じ類の「風情」として扱われるが、地続きの問題である以上当然考慮されて然るべきだ。それでもスポイルされない普遍的な魅力がこの作品にはある。男も女も平等におバカだし)

セットの作り込みの見事さ、芸術点高すぎな衣装、実力派キャストの輝き(歌もダンスも凄い!)。素晴らしかった!とくに望海風斗さんの可愛いお姿を拝見できて、幸福至極だった…あんなに可愛いうえに日本一歌がうまいんですけど。いったいどうなってるんですか?