舞台「RENT」感想|永遠に色褪せない、アウトサイダーたちの青春

舞台「RENT」感想|永遠に色褪せない、アウトサイダーたちの青春

東急シアターオーブで上演していた「RENT 25th ANNIVERSARY FAREWELL TOUR」を見に行った。

「RENT」は誰もが知るミュージカルの傑作で、以前から知ってはいたが見る機会がなかった。今回なぜ足を運んだかというと、おそらく会場にいた多くの人のようにNetflixで「tick,tick…BOOM!」を見て、さらに映画版「RENT」を見て、どうしてもオリジナル舞台を見ておきたくなったから。

「tick,tick…BOOM!」は35歳で「RENT」を作ったジョナサン・ラーソンの自伝的作品。ニューヨークの片隅でバイトしながら夢を追いかける若き日のラーソンが描かれる。ラーソンはずっと焦っている。もうすぐ30歳になる。それなのに自分はまだ何者にもなれない。尊敬するソンドハイムは、自分の年頃にはもう傑作を生み出していたのに。ただ作品を作る。友人は夢を諦め出世し、エイズは蔓延し、仲間の命を奪う。恋人は離れていく、それでもただ作品を作る。死の影がつきまとう。

そんな彼の人生が反映されている作品が「RENT」だ。おそらくラーソンの仲間達のように、マイノリティであることで苦しみながらも誇りを持ち、愛によって苦難を乗り越えようともがいた人々の物語だ。

エモーショナルなバラード(「Seasons of love」名曲!)、ロックでキャッチーなナンバー。ゲイカップルの純愛、クリエイターの苦悩、ドラッグ中毒やエイズに苦しむ仲間たち。大人たちからしたら厄介者たちの日常。そんな彼らを愛おしむような、優しく包み込むような物語なのだ。

実際ちょっと肩透かしなくらいストレートな愛の物語だから、舞台の真ん中で、恋人を失った悲しみを大きな声で歌ったりするのだ。ひねくれ者の自分としては面食らってしまうが、だけどもうそれでいいじゃないかと、抵抗虚しくオロオロと泣いてしまうような説得力がある。世界って愛でできてんじゃん・・・って思ってしまう。

「RENT」ポスター

こんなに純度の高い物語を、今の時代作れるだろうか? みんなが何を見たいかじゃない。世界に必要だから作るのではない。自分から溢れ出る物語を、自分から見える世界をそのまま描き、見た人の世界の見え方を変えてしまうような物語を。

どんなに年月が経っても、世界のどこかで「RENT」が再演されるたび、ラーソンが愛した人々が舞台上で生き返る。本当にすごいことだ。彼らは最高に魅力的で、観客はそんな彼らに何度も会いに行きたくなってしまうのだ。

みんなこう思う。あぁ、ラーソンが生きていてくれたら。彼は「RENT」の初演を見ることができなかった。師匠のソンドハイムは、去年逝ってしまったよ。さぁ私たちは残りの人生をどう生きるべきだろうか。

thank you, ジョナサン・ラーソン!