「マルホランド・ドライブ」感想|ついにデイヴィッド・リンチ作品の魅力を再発見できたぞ!
- 2020.09.17
- 映画レビュー
- デイヴィッド・リンチ
最近、映画.com編集長のレビューを読んで「マルホランド・ドライブ」を見直しました。このレビュー、あの難しい映画を読み解くヒントとして大変有益なのでぜひ読んで欲しい。
デビッド・リンチによる辻褄合わせが、想像を絶するレベルで成功した奇跡のような一本
https://eiga.com/movie/1126/critic/
私は大学生の頃に初めて「マルホランド・ドライブ」を見たが、マジで意味がわからなかった。が、お洒落なデザインと音楽、クレイジーでクールなキャラクター、意味深で知的な雰囲気に強烈に惹かれて、金もないのにリンチ作品のDVDを買い揃えるほど夢中になってしまった。
ストーリーが理解できなかったのは自分の思考力が足りないせいかな、なんてボンヤリ思っていたけど、昔買ったDVDを引っ張り出してみると「監督からの10のヒント」が書かれたフライヤーが入っていた(右側)。
・・・やっぱりみんな意味分かってなかったんじゃん!
編集長いわく「宣伝マンも全然意味分かってなかったよ」とのこと。どんな人にとっても、これは間違いなく難解な映画だったらしい。
今なら理解できるかな? とDVDを再生してみると、なんとまぁ。ちゃんと理解できるではないか! 編集長のレビューのおかげも大きいが、こういう現実と夢のレイヤーが折り重なる構造に抵抗がなくなっている自分に気づく。慣れって素晴らしい。おおきくなってよかったなぁ・・・。
特に本作はTVシリーズを映画としてリメイクしていて、リンチは意図的に辻褄合わせをしている。そのおかげでテーマが明確になり、わかりやすさも増しているようだ。
改めて見てみると、昔の印象とは異なり「泣き女」がクラブ・シレンシオで歌う場面が驚くほどエモーショナルに感じられた。ストーリーの意味がわかると、愛憎の念に引き裂かれる主人公の心情がありありと描かれた悲しくも美しいシーンだったことに思い当たるのだ。そして、こんなシーンをどうやったら思いつくのかと別の謎が深まるばかり。
DVDの特典映像でリンチは「音楽を聞くように映画を見てくれ」「見どころなんてないよ。僕は映画で全てを語った」「ある日アイデアが降ってきて、映画がうまくいくと確信したんだ」と語っている。
彼の映画は明確な結論を持たない。ただ、彼の素晴らしいところは、ある種の共感がそこにあることだ。世界のどこでもだれでも、目の前の人物を不意に不気味に思ったり、遠くを歩いている人から目が離せなくなったり、仄暗い路地裏に強烈な恐ろしさを感じたり、なぜだか説明がつかない気持ちを抱くことがある。
そんな「正体のない不思議な気持ち」を無尽蔵のアイデアと唯一無二のイマジネーションで世にも奇妙で美しい作品にしてしまうのがデイヴィッド・リンチの天才たるゆえんであり、私が強烈に惹かれてしまう理由なんだと思う。
ちなみにいまデイヴィッド・リンチはユーチューバーとしても活動していて、「今日のお天気」を伝えてくれたり「今日のラッキーナンバー」を教えてくれたりするので要チェックだ。
なんでも面白がって遊んで作品にしちゃうデイヴィッド・リンチ。
好き!という直感は、その時はなんだかわからなくても絶対的に正しい。むしろわからないからこそ正しい、そう思う。自信持て、君は正しいよ、若かりし頃の私。
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