21年2月の映画メモ

21年2月の映画メモ

もう3月半ばにもなるが、忘れそうなので特に面白かった映画をメモ。日本はコロナ禍でも比較的自由に映画館に行けるのが救いだ。いい映画も多かった。見出し画像は「ベイビーティース」の場面写真です。

燃ゆる女の肖像

女が女に惹かれる物語。とにかく静かに、絵のように美しい瞬間が次々と映し出される。まぶたに焼き付いて忘れられない、幸福な瞬間。良さを言葉で説明するのが難しい。

春江水暖 しゅんこうすいだん

中国映画。グー・シャオガン監督は30代前半と若い。故郷の山水画絵巻「富春山居図」にインスピレーションを得たということで、劇中に驚異的なロングショットがある。斬新で美しいシーン。伝統行事のもとで家族が集い、愛ゆえにぶつかり合う姿は普遍的で愛おしい。中国を身近に感じられる(最近見た中国映画はどれもエグい告発系映画だったから・・・)

ベイビーティース

余命わずかの少女が主人公、という設定で安易な感傷に引っ張られるのでは、という懸念はあっさりと覆される。こんなに心に残る青春映画はめったに見られない。監督のセンスが抜群に良い。見終わったあと心の底から悲しくて切なくてやりきれない。ラストシーンが素晴らしい。

あのこは貴族

社長令嬢、議員の息子・・・生きている世界が違う東京の貴族。そんな貴族の女と庶民の女、それぞれの幸せをめぐる物語。
貴族側にも庶民側にもリアリティが漲っていて素晴らしい。誰もがみな孤独と戦いながら自分だけの幸せの形を模索している。女達だけでなく、男の苦しさも描いていて好印象。
庶民の女を演じる水原希子が実家で中学時代のジャージをズボーンと履くシーンが出色。しかもこの実家がマジ実家で見事。国民の実家。デティールにときめく。

サウンド・オブ・メタル(AmazonOriginal)

爆音ドラマーがある日失聴してしまう。何かを喪失すること、喪失によって変わっていく自分と世界を受容せざるを得ない男の苦悶。「聴こえるということ」を見つめ直せる、稀有な作品。静かな映画館で見たかった。なかなかこのアプローチは珍しい。アマプラでいますぐ見られる。
ちなみにちょっと売れ気味なバンドマンのキャラ造形がリアルで悲しかった…これがわかりみってやつ。

DAU ナターシャ

1950年代「ソ連全体主義」の社会を現代に完全再現した狂気のプロジェクトが「DAU」。セットの中で被験者たちは当時と同じように振るまい、市民として生活する。その中で生み出された作品で、ナターシャが主人公。
脚本はあるようだがそこで繰り広げられる暴力、駆け引き、エロスの臨場感がすごい。見たあとの疲労感。拷問のシーンを演じるのは元KGB軍人だ。
監督は主人公を変えて「DAU. ○○○」シリーズを連作しているらしい。シンプルに執念が怖い。