映画関係の仕事をやめてから映画館が好きになった

映画関係の仕事をやめてから映画館が好きになった

映画関係の仕事を辞めてから、映画館に映画を見に行くことが増えた。仕事で自宅でも映画館でも唸るほど映画を見てきたが、やはりそれは仕事。映画を見ることへの高揚感は年々薄くなっていたのかもしれない。好きを仕事にするのはコスパ的に最強だが、少しは失うものもある。少しも失いたくないのなら、好きを仕事にするべきではない、と今では思う。

なにより、自分にとって映画は非日常であるべきだということを特に感じる。重い腰を上げてひとり映画館へ出向き、静寂と暗闇のなかで映画を見ることが人生において「とても良い」ことなんだと。映画が自分の日常の延長線になっていた頃は、そう感じることが少なくなっていた。それでも、仕事で得たものの方が多いと思う。映画を愛する人達にたくさん会えたから。

映画業界で活躍する人々を近くで見て一番に感じたのは、彼らの映画への熱量の高さだ。いい意味で映画しかできない。息をするように映画を見て、どうやったら映画の素晴らしさをみんなに知ってもらえるのかいつでも考えていて、結果他の誰にも生み出せない価値を社会に還元している。彼らに出会えて本当に良かった。映画の仕事を選んだ過去の自分を褒めたい。

私には映画以外にも好きなことが、お賃金を貰える程度に得意なことがいくつかある。気が多くて落ち着けない。だから映画関係の仕事をやめて、今の自分に合った仕事を選んだ。多分、そういう生き方のほうが合っている(それでも楽しくて10年近く同じ会社にいた。すごいことだ)。

でも、だからこそ私は、一つのことに没頭し人生をかけて徹底的に追求する人々が好きだ。彼らのような生き方にいつも憧れるし、自分にはできないことだからこそ尊敬し、心から応援したいと思う。タカラジェンヌが好きなのと同じ。彼らは自分だけの美しいものを知っている。その美しさを、そっと私達に見せてくれる。そんな感じ。

ただ、信じられないサイコパスも何人か見かけたことも事実だ。自分の欲望のために人を利用し傷つけて平然としている人を見た。映画を愛するがゆえに身動きが取れず苦しんでいる人も見た。自分が得意なことでいつか彼らを救えるようになれればいいと思う。でも、サイコパスはサイコパスだから、サイコパスなんだよね・・・